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資格取得費用や留学費用は賠償予定にあたるのか!?③ ~医療法人K会事件~

東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズです!

 

資格取得費用や留学費用を会社が立て替えた末、条件を満たさずに退職等に至った結果、費用の是非について争った裁判例を紹介します。

 

 

【目次】

◆事実の概要

◆事件の争点

◆判決の判断

◆まとめ

 

 

__________________________________________

 

 

◆事実の概要

修学金貸付制度を利用して、働きながら看護学校に通っていた社員が退職することとなりました。貸付金制度は以下のようになっていました。

 

・修学資金貸し付けを受けた者が、その課程を卒業し、引続き法人の医療施設において勤務する期間が通算して理学療法士・作業療法士・診療放射線技師・臨床検査技師・看護婦6年以上、准看護婦・介護福祉士4年以上であるときは、貸付金の全額について免除する。

 

・修学資金は、次の各号の一に該当するときは、当該各号の事由が生じた時点において、貸付修学資金の全額を返還しなければならない。

但し、病気その他のやむを得ない理由により、法人の承諾を得て中途退学又は退職する時は、法人は貸付修学資金の返還を免除又は猶予することがある。

・修学年限を中途退学する時。
・免許を取得した後、その業務に従事しなかった時。又、勤務すべき期間内に退職する時。

 

会社が社員の正看護師としての期間は5年半程度で、上記勤務期間が6年に到達していないことを理由に返還を求めた事例です

 

◆事件の争点

 

①貸付金の性質

 

②貸付金規定の是非

 

③賠償予定の禁止の該当性

 

 

◆判決の判断

①社員の看護学校進学は、会社における正看護師確保のためのその養成の一環と位置付けられるものであり、正看護師の資格取得はまさに業務に直結するものである。そして、本件貸付の実質は、在学中の給与の減少分を補填する目的で、むしろ賃金の補充として位置付けられるものであった。本件貸付の返還及び免除条件については、社員にとって明確ではなかった。

 

 

②本件貸付規定は、返還の事由が勤務の継続と直接的に関連付けて定められており、返還免除期間についても、看護師について労基法14条が労働者の退職の自由を制限する限界としている3年間の倍の6年間であり、同条の趣旨からも大きく逸脱した著しい長期間である一方で、勤続年数に応じた減額措置もなく、この返還義務の負担が退職の自由を制限する事実上の効果は非常に大きい。しかも、本件貸付規定により、労働者の退職の自由について課す制限は、目的達成の手段として均衡を著しく欠くものであって、合理性があるとは到底認められない。

 

 

③本件貸付の返還合意部分は、実質的には、経済的足止め策として、退職の自由を不当に制限する、労働契約の不履行に対する損害賠償の予定であるといわざるを得ず、本件貸付の返還合意部分は、労基法16条に反するものとして同法13条により無効であり、本件貸付は、返還合意なき給付金契約になり、本件貸付に係る貸金債務は返還合意を欠くため成立しない。

 

◆まとめ

本件は返還免除期間が長すぎることを理由に返還合意自体が無効となり、給付金契約扱いとなりました。返還免除期間設定の上限は3年を基準とすることが良いと言える事例だったと思います。

 

 

いかがでしたでしょうか?資格取得の費用補助をしてあげたいがどうすればよいかわからない、資格取得をさせたいけれどもすぐやめられては困る等お悩みの方はお気軽に東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問合せください

 

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