懲戒手続きはどこまで有効!?どこから無効!?② ~国立大学法人群馬大学事件~
東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
今回は懲戒手続きを行った結果、訴えられた裁判例を紹介します。
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【目次】
◆事実の概要
◆事件の争点
◆判決の判断
◆まとめ
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◆事実の概要
大学は教授に対してセクハラパワハラ等を理由に諭旨解雇処分としたうえで、諭旨解雇の応諾書または応諾拒否書のいずれか一方にサインをするように求めました。これに対して教授は一旦持ち帰って検討したい旨を伝えたところ、この言動をもって諭旨解雇の応諾を拒否したものと判断し、懲戒解雇処分とする旨を告げて、懲戒処分書と処分説明書を交付しました。教授は解雇無効として労働契約上の権利を有する地位の確認と賃金等と諭旨解雇処分を懲戒解雇処分に切り替えた行為により、意思決定の機会を奪われ、精神的損害を被ったと主張して、慰謝料100万円等を請求しました。
◆事件の争点
①解雇及び手続きについて
②ハラスメントの程度及び解雇の合理性
③精神的損害
◆判決の判断
①本件懲戒解雇は、同日の時点では、教授が退職願の提出の「勧告に応じない」と断定できないにもかかわらず行われたものであり、解雇手続が就業規則の規定に違反した違法な処分である。本件懲戒解雇は、そもそも全く懲戒事由が存在しないのに懲戒解雇したというような場合ではなく、諭旨解雇から懲戒解雇への切替えが不相当であったに留まる。本件懲戒解雇の手続が違法であったとしても、大学は、教授が諭旨解雇の勧告に応じるのに十分な時間が経過した後、日時を改めて、懲戒解雇することになるだけであるから、手続的瑕疵は軽微なものであった。
②懲戒事由に該当するハラスメントの内容及び回数は限定的である。その上、教授のパワーハラスメントはいずれも業務の適正な範囲を超えるものであるものの業務上の必要性を全く欠くものとはいい難いし、また、原告のセクシュアルハラスメントが殊更に嫌がらせをする目的に基づいてなされたものとはいえないことからすれば、教授のハラスメント等の悪質性が高いとはいい難い。本件懲戒解雇は、被告の懲戒権又は解雇権を濫用するものであるから、無効である。
③懲戒解雇は、退職金の支給がなく、再就職等にも少なからず影響を与える重大な処分であることからすれば、教授の諭旨解雇の勧告に応じる機会は法律上保護に値する利益というべきであり、大学が本件諭旨解雇を本件懲戒解雇に切り替えた行為は、法律上保護される利益を侵害するものであり、不法行為を構成するといわざるを得ず、被告は、精神的損害を賠償する責任を負う。
◆まとめ
本件は処分の切り替えに手続き的な瑕疵があると認定し、精神的慰謝料の請求を認容。また、教授のハラスメント行為は軽微なものとして解雇無効となりました。一方的に諭旨退職処分の応諾を拒否したと判断したことはいささか急ぎ過ぎたのではといった印象です。
いかがでしたでしょうか?懲戒処分を行いたいけど方法がわからない、行為に対してどのくらいの処分にするか悩んでいる等懲戒手続きをお考えの方はお気軽に東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお気軽にお問合せください
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