裁判例から学ぶセクハラの考え方③ ~A市職員セクハラ損害賠償事件~
東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
今回は女性社員が被った度重なるセクハラ行為に対し、適切な対応がなされなかったため精神的苦痛を受けたとして争った裁判例をご紹介いたします。
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【目次】
◆事件の概要
◆判決の争点
◆判決の判断
◆まとめ
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◆事件の概要
女性社員の男性上司がバーベキューパーティーの際に女性社員をを膝に座らせて「不倫をしよう」と言ったり、その写真を撮るなどした。また、歓送迎会や暑気払いの席で、「結婚しろ」「子供を産め」などと発言し、研究会の懇談会で他市の男性職員が独身であることがわかると、「うちにいいのがいるから」と発言した。女性社員は相談窓口に男性上司の行為をセクハラとして申し出、改善を求めたが、相談窓口は、女性社員に何の連絡もしないまま男性上司から事情聴取をし、証拠の収集などを行わなかった。女性社員はA市に対して、上司のセクハラ行為とともに、相談窓口や市長の対応に義務違反があるとして国家賠償法1条1項による損害賠償を請求した。
◆判決の争点
①男性上司の行為について
②相談窓口の対応について
③市長の対応について
◆判決の判断
①バーベキューパーティー時の行為は、多くの人たちの面前で女性社員に強い不快感、屈辱感と羞恥の感情を与え、強い精神的苦痛を与えるものであり、個人としての人格や尊厳を違法に侵害する権利侵害行為というべきであって、雇用の分野における均等な機会及び待遇の確保等に関する法律21条1項の「性的な言動により女性労働者の就業環境が害される」いわゆる「環境型セクシュアルハラスメント」に該当する。また、「うちにいいのがいるから」との発言も、性的な関心に基づくもので、話題になった女性社員に不快な感情を抱かせ、精神的苦痛を与えるものと認められるから、違法な権利侵害行為として環境型セクハラに該当する。その他の発言(結婚しろ、子供を産め等)も、性的関心に基づくもので、これも環境型セクハラに該当するといえる。※セクハラ認定
②相談窓口は女性社員の上司に対する事情聴取から、セクハラがあったことを認識していたにもかかわらず、女性社員から事情を聴取することもなく、客観的な証拠である写真の収集もしなかった。また、女性社員の求めで面談した時も、本人が異動を希望していると思い込み、4月まで待つように述べただけであり、また、職場で蚊帳の外に置かれているとして救済を求めたのに対しても、今の仕事は荷が重すぎたのかもしれないなどと女性社員の責任であるかのような発言をし、全体として加害者をかばう発言を繰り返した。結局、女性社員に対し、何らの措置をとることなく、また加害者についても何らの処置を検討することもなかった。このように問題解決にとって特に重要な事実の調査・確定を十分行わず、当時把握していた事実によっても当然検討すべきあると考えられた女性社員の保護や加害者に対する制裁のいずれの点についても、何もしなかったと評するほかない。バーベキュー時の言動が重大な人権侵害と評価すべきであることを前提に考えると、相談窓口の不作為は、権限や職責の不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠き、国家賠償法1条1項の適用上違法というべきである。※義務違反認定
③市長は、女性社員から内容証明を受け取ったのを契機に、助役に事実関係の調査をさせるなどしたが、調査結果としてセクハラに該当する事実は認められなかったとの報告がなされ、市長から見て上記調査結果が明らかに不当であるといえるような事情があったと認めるに足りる証拠も存在しない。そうすると、市長の権限不行使が著しく不合理であるとはいえず、国賠法1条1項の適用上違法であるということはできない。※義務違反なし
いかがでしたでしょうか?最終的には男性社員のセクハラ行為に対して120万円の慰謝料、相談窓口の不履行に対して80万円の慰謝料の支払いが命じられました。本件は公務員の事案であるため公務員個人としては免責され、市のみに支払いが命じられました。しかし、民間企業の場合、個人に直接責任追及される恐れがあります。また、相談窓口対応のマニュアル等を整備しておくことも重要です。
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