退職の意思表示っていつまで撤回可能!?⑤ ~大塚製薬事件~
東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
退職の意思表示をしたのにも関わらず、その効力について争った裁判例を紹介します。
【目次】
◆事実の概要
◆事件の争点
◆判決の判断
◆まとめ
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◆事実の概要
社員らは徳島で採用され会社の業務に従事していましたが、社員らの所属する部門が事業譲渡されることとなりました。会社は社員らに転籍してもらいたいと考えましたが、就労場所が埼玉になること、労働条件等が相違することから、転籍に際しては退職金上乗せ支給と2年間の給与差額分の支払いを、退職するとしても退職金の上乗せと1年間の就職活動支援を行うこととしました。会社は2回の面談を行い社員らはそれぞれ転籍か退職の選択を取りましたが、転籍又は退職以外の選択はない誤信して意思表示をおこなったものであり、錯誤による無効を主張して訴えを起こしました。
◆事件の争点
①会社の対応について
②錯誤無効について
◆判決の判断
①会社では転籍に同意しない者を他の部門に配転し、または関連会社に出向させる等の措置を講じることは考えておらず、事業譲渡について説明をした際にも、転籍または退職の選択を提案するにとどまった。その後の個人面談においても、また、社員の質問に対する回答をイントラの掲示板に掲載した際にも、転籍も退職も選択せずに引き続き勤務する選択肢があることを説明しなかった。会社自身、社員が転籍も退職も選択せず「残る」という選択をした場合、どのように対応するかを明確に決めず、社員に対しても明言を避けていたことがうかがわれる。しかし、一方、会社が社員らに対し、社員らが転籍または退職のいずれも選択しない場合には解雇しかありえない旨告げたとか、あるいは転籍または退職の2つしか選択肢がない旨明言したと認めるに足りる証拠はない。
②会社が、会社に残るという選択肢があることを明確に説明しなかったとしても、社員らの意思を無視して転籍または退職のいずれかを選択することを強要し得るわけではなく、社員らはそのいずれも選択しないことができたというべきであるところ、社員らは転籍または退職した場合の退職金額など具体的な条件の内容等を検討した上、任意にいずれかを選択し、退職または転籍の意思表示をしたものと認められる。そして、社員らが会社に対して退職等の意思表示をするに際し、転籍または退職以外の選択肢がないという事情が動機である旨明示的または黙示的に表示した事実は認められない。したがって錯誤無効の主張は認められない。
◆まとめ
本件は会社に若干の落ち度があるとされつつも、錯誤無効はなく転籍又は退職の意思表示は有効とされました。選択肢がいずれも代償措置があったことは大きなポイントだったのではないかと考えます。
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