退職の意思表示っていつまで撤回可能!?③ ~富士ゼロックス事件~
東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
退職の意思表示をしたのにも関わらず、その効力について争った裁判例を紹介します。
【目次】
◆事実の概要
◆事件の争点
◆判決の判断
◆まとめ
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◆事実の概要
40代の女性社員が勤怠記録の虚偽申告や不正請求を理由に自己都合退職をするか懲戒手続きを進めるかの選択を迫られたところ女性社員は退職する旨を会社に告げました。その後会社は出勤停止30日間の懲戒処分を言い渡し、女性社員は退職願いを提出しました。女性社員は会社に対し、本件退職の意思表示は自主退職しなければ懲戒解雇されると信じたものであって、錯誤(民法95条)により無効であると主張し、雇用契約上の地位の確認等を求めて訴えを起こしました。
◆事件の争点
①退職願の提出
②虚偽申告等の悪質性
◆判決の判断
①女性社員は、3月11日事情聴取において、会社の人事担当者から、「自主退職であれば退職金は出る」、「懲戒解雇は退職金を支払わない、一番重たい結論になる可能性が高い」などと言われ、自主退職するかをその場で答えるよう求められたため、考える猶予を求めたところ、「結果が出ているのにこの期に及んで」などと言われたこと、本件出勤停止処分の言渡し後、…継続して勤務ができるということか、と尋ねたところ、「懲戒解雇に当たるところを、退職をもって責任を取りたいという、その表明をしたことを勘案して出勤停止30日になった」などと言われたことから、自主退職しなければ、懲戒解雇されるものと信じ、退職金不支給、再就職への悪影響といった不利益を避けるために、本件退職意思表示をしたものと認められる。女性社員は、本件退職の意思表示直前に、「私の場合は懲戒解雇があって、2種の選択の中で自主退職をということで、言い出した」と発言したことからすると、女性社員は、会社に対し、本件退職意思表示の動機は、懲戒解雇を避けるためであることを黙示的に表示したものと認められる。本件退職意思表示当時、40歳の女性で、再就職が容易であるとはいえないことも考慮すると、女性社員が自主退職しなければ懲戒解雇されると信じたことは、要素の錯誤に該当する。
②会社が有効に懲戒解雇をなし得たかについて検討する。女性社員の勤怠の虚偽申告は、積極的に会社を欺罔して、金員を得る目的、意図をもってしたものとは認められないこと、本件二重請求等に故意は認められないこと、過剰請求額は9,420円であり多額とは言えないところ、いずれも返金されていること、杜撰な出退勤時刻の入力が長期間に及んでいることには、会社による勤怠管理の懈怠も影響していることを総合考慮すると、その動機、態様等は懲戒解雇が相当であるといえるほどに悪質であるとは言い難い。
◆まとめ
本件は会社に取って、手痛い判決となりました。年齢も考慮の上判断するとなると、錯誤無効(※現在は取消)の主張範囲が広いものとなるでしょう。
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