退職勧奨の進め方は慎重にすすめるべき!?③ ~豊富町事件~
東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
退職勧奨が思うように進まず争った裁判例を紹介します。
【目次】
◆事実の概要
◆事件の争点
◆判決の判断
◆まとめ
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◆事実の概要
検査技師は器物損壊等の非違行為を行ったため、部長との面談にて退職勧奨を受けました。検査技師は残りの年休を消化して6月7日までの休暇届を提出しました。その後5月15日から職場復帰したい旨をつげたところ、検査技師から口頭での退職の意思表示があったことを前提にして、検査技師に対し退職承認処分を行い、検査技師は、同日までに本件処分があったことを知りました。退職勧奨の撤回を求めて訴えを起こしました。
◆事件の争点
①退職撤回の意思表示
②退職勧奨
③手続きについて
◆判決の判断
①検査技師は、口頭で本件退職の意思表示をし、後日、退職願を提出する前に翻意して本件退職の意思表示を撤回したというものであること、本件退職の意思表示の撤回は、本件退職の意思表示から18日(土休日を除けば9日)足らずでされており、その間、検査技師は弁護士に相談するなどしていたことの事情も考慮すれば、本件退職の意思表示の撤回をしたことについて、検査技師に責められるべき事情があるとは認められない。
②院長は、検査技師に対し、懲戒免職もあり得ることを示唆して退職勧奨をしたことが認められるが、同退職勧奨については、社会通念上相当性を欠くものというべきである。すなわち本件懲戒処分の処分理由は、本件器物損壊行為のみであるところ、職員に対する懲戒処分の量定基準としては、器物損壊の場合は減給又は戒告であること、本件器物損壊行為について、検査技師に言い渡された刑は罰金10万円にすぎず、同種前科等があるなどの事情もうかがわれないこと、検査技師は、釈放後、速やかに被害弁償の申出をし、病院の損害についてはてん補されていることからすれば、本件器物損壊行為が病院の設置する職員宿舎内で行われたことを考慮しても、懲戒免職に相当する行為であるとまでは認めることができない。それにもかかわらず、院長が検査技師に対し、非違行為と均衡を欠く処分である懲戒免職もあり得ることを示唆した上で退職勧奨を行ったことは、社会通念上相当性を欠いた退職勧奨であったといわざるを得ない。
③病院には、業務上、臨床検査技師が必要であったところ、本件退職の意思表示を信頼して平成24年4月24日にはXの後任者である新たな検査技師の任用期間を延長し、同年10月1日付けで同人を正職員として任用しているのであるから本件退職の意思表示の撤回は信義則に反するなどと主張する。しかしながら、こうした結果は、病院において、検査技師の退職願の提出を待たずに手続を進めたことや、本件処分の効力を停止する旨の裁判所の決定の存在を無視したことにより生じたものといえるのであって、検査技師の責めに帰すべき事情として転嫁すべきではないというべきである。
◆まとめ
本件は退職の意思表示の撤回が有効となりました。退職勧奨の進め方は本当に慎重に行わないと、社会通念上相当性を欠くとして無効となってしまいます。言動によっては実質解雇ともとられるケースが必要なので言動には十分な注意が必要です。
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