就業規則の効力ってどこまで有効なの!?③ ~丸林運輸事件~
東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
就業規則の有効性について争った裁判例を紹介します。
【目次】
◆事実の概要
◆事件の争点
◆判決の判断
◆まとめ
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◆事実の概要
社員A及び社員Bは組合の会合を兼ねた食事後、翌早朝出庫のためトラック内の仮眠用ベッドで寝ることとし、コンビニの駐車場に停めた社員Aのトラック内で午後8時から9時頃まで飲酒をしていました。社員Bが自分のトラックに戻り暖を取るためにエンジンをかけていたところ対立組合の役員である配車係長や班長が来て、「飲酒運転だ」「聴聞会を開く」などと責め立てて立ち去りました。翌日以降に聴聞が行われ、会社は社員らを懲戒解雇しました。これに対して社員らは地位確認等を争って訴えを起こしました。
◆事件の争点
①会社に懲戒権が存するか
②懲戒権の濫用に該当するか
◆判決の判断
①使用者が懲戒処分をするためには、あらかじめ就業規則において懲戒の種類及び事由を定めておくことを要し、また、就業規則が法的規範としての性質を有するものとして拘束力を生ずるためには、その内容を周知させる手続が採られていることを要する。本件の場合、聴聞においてさえ、就業規則の一部を明らかにするのみで、全部の開示を拒んでいたことが認められ、周知手続を採っていたと認めるに足りる証拠はない。また、契約書・誓約書に解雇受忍のような文言があっても、使用者が従業員に対して行う懲戒処分に関し、懲戒の種類及び事由を定めたものと解することは困難である。したがって、会社が、就業規則、労働契約、誓約書に基づき懲戒権を有すると言うことはできない。
②仮に会社が懲戒権を有するとしても、懲戒権の行使が相当性を欠く場合には懲戒権の濫用として、当該懲戒処分は無効になる。本件については社員A・Bが飲酒後トラックを運転したことを裏付ける証拠は存在しない。飲酒運転を証言する係長・班長等の証言は、組合間の対立などの事情に照らすと採用できない。また、業務と無関係にトラックを移動し、アイドリングして燃料を私的に消費したことは認められるが燃料消費が軽微なものと評価できることなどから、懲戒解雇を選択することは処分として重きに失する。その他、懲戒解雇事由として過去再三事故を起こしたこと、解雇後、トラックの鍵とETCカードを返却しなかったこと等を主張するが、解雇後の行為については、懲戒当時使用者が認識していなかった非違行為の存在をもって当該解雇の有効性を基礎づけることは許されない。また、過去の事故等は仮処分になるまで会社が解雇理由として主張していなかったことからすると事後的にこれらを理由に付加することは許されない。
◆まとめ
聴聞の際に就業規則の一部分しか開示しなかったことを理由に周知手続きが為されていないため就業規則の効力が否定されました。監督署への届出だけではなく、周知も必須だということが言えるでしょう。
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