就業規則の効力ってどこまで有効なの!? ~江戸川会計事務所事件~
東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
就業規則の有効性について争った裁判例を紹介します。
【目次】
◆事実の概要
◆事件の争点
◆判決の判断
◆まとめ
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◆事実の概要
会計事務所に勤務していた社員が就業規則に基づいて退職金及び退職月の賞与、賃金の支払いを求めました。これに対して会計事務所は監督署に提出している就業規則は形式的なもので無効だとし、仮に就業規則の効力は有効だとしても横領による損害賠償債務への充当に合意したものであるから支払い義務はないとして争いました。
◆事件の争点
①就業規則の効力
②債務充当の成否
③賞与の支払い義務
◆判決の判断
①どのような動機から本件就業規則を作成したものであっても、会計事務所が自らの意思で、その所員との間の労働契約関係に関するものであるとしてこれを作成し、労働基準監督署に対して提出したものである以上は、特段の事情が認められない限りその内容は会計事務所とその所員との間の労働契約の内容として効力を有するものと認められる。本件就業規則等においては会計事務所の所員に対する退職金の支給条件が明確に規定されているのであるから、会計事務所は社員に対してそれに基づく退職金の支払義務を負担する
②社員と会計事務所代表者との間で、本件退職金不払合意のうち、会計事務所が社員ら社員の夫の相続人に対して支払うべき同人の死亡退職金について、これを支給しないとの合意がなされたことが認められる。会計事務所代表者は、社員が会計事務所等の経理に関する不明瞭な取り扱いに関し、納得できる説明がないことをもって社員が横領行為をしていたものであると考え、社員にこの事実を認めさせたうえで会計事務所を退職させ、こうした行為の責任をとらせる中で本件退職金不払い合意を承諾させようと臨んだ話し合いの際に、社員から横領行為の存在を強く否定され、社員の夫の死亡退職金をもってこれによる損害に充当したいとの要求を強く拒まれた。そこで、社員に対して、自らの要求を受け入れられないのであれば刑事告訴及び懲戒解雇処分をせざるを得ない旨を告知し、その結果、社員をして社員の夫の死亡退職金の請求権を放棄させることを内容とする合意をなさしめたことが認められる。社員が会計事務所に対し請求しうるべき社員の夫の死亡退職金を放棄することを内容とする合意をする意思表示は、会計事務所代表者の脅迫行為に基づくものと言わざるを得ないものであり社員は、会計事務所に対し社員の夫の死亡退職金の支払を求める権利を失わない
③会計事務所がその所員に対して支給していた賞与は、任意的恩恵的給付としてされていたものと言うべきであるから、結局のところ、社員は受け取るべき賞与の支給を受けていなかったとしても、同月に社員に対して支給されるはずの賞与額を適宜に定めて、その金額を賞与として請求することはできないと言わざるを得ない
◆まとめ
形式上でも、一旦会社の意思で届出された就業規則の効力は有効となり、賃金債権の放棄は認められず社員の請求がおおよそ認められることとなりました。形式的でも退職金規定を作成して効力が発生すると思わぬ事態になりかねない事例と言えるでしょう。
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