適正な懲戒処分ってどこまでの範囲内!? ~日本郵便地位確認訴訟事件~
東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
懲戒処分の有効性(特に処分の量刑)を争った裁判例を紹介します。
【目次】
◆事実の概要
◆事件の争点
◆判決の判断
◆まとめ
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◆事実の概要
社員は100回以上にわたり宿泊費等の請求を水増しするなどの不正受給をしていました。会社は懲戒委員会の意見を聴取したうえで、社員を懲戒解雇にしました。これに対して無効を争った事案です。
◆事件の争点
①懲戒事由に該当するか
②他の規律違反者との均衡
③処分の適格性
◆判決の判断
①社員は、実際には社用車で出張先に赴きながら、出張後に公共交通機関の利用料相当額の旅費の支給を受けたほか、私的に利用するためのクオカード分が上乗せされた宿泊費を請求して実費を上回る宿泊費の精算を受けたものであると認められる。そうすると、社員による旅費の不正受給は、就業規則の懲戒事由に該当する。
②社員と本件服務規律違反者らのうち最も重い処分である停職3か月を受けた者とを比較すると、不正請求の期間は社員が約1年6か月、本件服務規律違反者が約3年6か月、不正請求の回数は社員が100回、本件服務規律違反者が247回、非違行為による旅費の額は社員が194万円、本件服務規律違反者が41万円、正当な旅費との差額は控訴人が54万円、本件服務規律違反者が27万円であり、社員の方が非違行為による旅費の額や正当な旅費との差額は大きいが、不正請求に及んでいた期間や回数はむしろ少ない。本件非違行為の態様等は、本件服務規律違反者らの中で最も重い停職3か月の懲戒処分を受けた者と概ね同程度である。
③本件非違行為は、社員が、100回という非常に多数回にわたり、旅費の不正請求を繰り返したというもので、その不正受給額も合計約54万円にのぼっている上、社員が広域インストラクターという営業インストラクターの中でも特に模範となるべき立場にあったことなどを踏まえると、その非違の程度が軽いとはいえない。他方で、多数の営業インストラクターが社員と同様の不正受給を繰り返していたなど会社の旅費支給事務に杜撰ともいえる面がみられることや、社員に懲戒歴がなく、営業成績は優秀で会社に貢献してきたこと、本件非違行為を反省して始末書を提出し、利得額を全額返還していることなど酌むべき事情も認められる。本件非違行為の態様等は、本件服務規律違反者らの中で最も重い停職3か月の懲戒処分を受けた者と概ね同程度であるといえ、懲戒処分として懲戒解雇を選択すれば、前記停職3か月の懲戒処分を受けた者との均衡も失するといわざるを得ない。本件非違行為は、雇用関係を終了させなければならないほどの非違行為とはいえず、懲戒解雇を選択することは不合理であり、かつ相当とはいえない。本件懲戒解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当なものとして是認することができないものであり、無効と認められる。
◆まとめ
100回以上にわたる不正受給を行っていたにもかかわらず、同等以上の非違行為を行ったものに対する処分の均衡がとれていないとのことから解雇無効となりました。横領等は解雇有効となる要素の一つですが、退社との比較も重要と言わざる得ないケースでしょう。
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