資格取得費用や留学費用は賠償予定にあたるのか!?④ ~長谷工コーポレーション事件~
東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
資格取得費用や留学費用を会社が立て替えた末、条件を満たさずに退職等に至った結果、費用の是非について争った裁判例を紹介します。
【目次】
◆事実の概要
◆事件の争点
◆判決の判断
◆まとめ
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◆事実の概要
社内留学制度を利用した社員が、留学後2年足らずで退職したため会社は留学費用の返還を求めました。求めた返還は留学費用約850万円のうち470万円です。
誓約書の内容は以下です。
① 留学先へ渡航後は、学業に精励し、必ずや学位を取得し卒業すること。
② 卒業後は、直ちに帰国し、会社の命じるところの業務に精励するとともにその業績目標達成に邁進すること。また、会社の留学生の名に恥じないような見識を備えるべく日々努力すること。
③ 帰国後、一定期間を経ず特別な理由なく会社を退職することとなった場合、会社が海外大学院留学に際し支払った一切の費用を返却すること。
◆事件の争点
①社内留学制度の業務関連性
②返済免除期間のない金銭消費貸借契約
③労働基準法16条に抵触するか
◆判決の判断
①本件留学制度は、社員の自由意思によるもので業務命令に基づくものではなく、留学先の選択も本人の自由意思に任せられており、留学経験や留学先大学院での学位取得は、留学社員の担当業務に直接役立つというわけではない一方、留学社員にとっては会社で勤務を継続するか否かにかかわらず、有益な経験、資格となる。従って、本件留学制度による留学を業務と見ることはできず、その留学費用をどちらが負担するかについては、労働契約とは別に、当事者間の契約によって定めることができるものというべきである。
②社員は留学に先立って、誓約書を交わし、会社から本件留学費用の交付を受けたことが認められるから、会社と社員との間で、少なくとも本件学費については、一定期間会社に勤務した場合には返還債務を免除する旨の特約付きの金銭消費貸借契約が成立していると解するのが相当である。返還債務免除の基準は曖昧な点はあるが、そもそもこれはあくまでも債務免除の特約であるから、その基準が曖昧であることから消費賃借契約自体が成立していないということはできない。
③社員は会社に対し、労働契約とは別に留学費用返還債務を負っており、ただ、一定期間原告に勤務すれば右債務を免除されるが特別な理由なく早期退職する場合には留学費用を返還しなければならないという特約が付いているにすぎないから、留学費用返還債務は労働契約の不履行によって生じるものではなく、労基法16条が禁止する違約金の定め、損害賠償額の予定には該当せず、同条に違反しないというべきである。また、本件請求を全額認容することが信義則に反するということはできない。
◆まとめ
本件は返済免除期間を定めていないにも関わらず、請求額全額が認容されました。返還請求額が留学費用全額ではなく約55%程度だったことも影響していると考えます。
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