服務規律違反による解雇無効!?③ ~グレイワールドワイド事件~
東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
今回は服務規律違反により解雇を行った結果、訴えられた裁判例を紹介します。
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【目次】
◆事実の概要
◆事件の争点
◆判決の判断
◆まとめ
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◆事実の概要
社員は平成13年5月23日から6月19日までの出勤日20日間に、会社から貸与されたパソコンを使用して、私用メール49通(うち、送信35通、受信14通)を送受信していましたが、そのうち就業時間内に行われたものは39通(うち、送信33通、受信6通)でした。この私用メールにおいて、社員は被告会社内部のみならず、外部に対しても経営批判を繰り返し、その内容は会社CEOのことを「アホバカCEO」と評し、あるいは「気違いに刃物(権力)」など上司に対する批判が含まれていました。そこで、会社は、社員に事情聴取したが、反省の意思も会社経営陣の指示に服する考えもないことが判明したため解雇したものである。これに対して社員は解雇無効の訴えを起こしました。
◆事件の争点
①職務専念義務
②解雇事由の該当性
③解雇の合理性
◆判決の判断
①労働者は、労働契約上の義務として就業時間中は職務に専念すべき義務を負っているが、労働者といえども個人として社会生活を送っている以上、就業時間中に外部と連絡をとることが一切許されないわけではなく、就業規則等に特段の定めがない限り、職務遂行の支障とならず、使用者に過度の経済的負担をかけないなど社会通念上相当と認められる限度で使用者のパソコン等を利用して私用メールを送受信しても上記職務専念義務に違反するものではないと考えられる。本件についてみると、就業時間中の私用メールは禁じられておらず、社員が送受信したメールは1日あたり2通程度であり、職務遂行に支障を来したとか会社に過度の経済的負担をかけたとは認められず、社会通念上相当な範囲内にとどまる。よって原告が職務専念義務に違反したということはできない。
②私用メールの送受信行為自体が直ちに職務専念義務違反にはならないとしても、その中で上記のような会社に対する対外的信用を害しかねない批判を繰り返す行為は、労働者としての使用者に対する誠実義務の観点からして不適切と言わざるを得ず、解雇事由に該当する。
③しかし、当該行為は背信性の程度が低く、社員は22年間勤務し、良好な勤務実績を挙げて被告に貢献してきたことを併せ考慮すると、本件解雇は解雇権濫用にあたり無効である。
◆まとめ
本件は、職務専念義務違反はなく、会社に対して経営批判をすることは解雇事由に該当し得るが、長年の勤務等を考慮した結果、解雇は無効となりました。通常就業規則で私的メールの禁止等がない場合、業務に支障をきたす程度でなければ職務義務違反とはならないとされていますが、判決によって意見が分かれています。社内のネット環境の整備は非常に重要だと言えるでしょう。
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