年次有給休暇の時季変更権はどこまで有効か?⑥ ~時事通信社事件~
東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
今回は年次有給休暇の取得に対して時季変更権を行使した裁判例・判例を紹介します。
【目次】
◆事実の概要
◆事件の争点
◆判決の判断
◆まとめ
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◆事実の概要
科学技術記者クラブの記者として勤務していた社員が、ヨーロッパの原子力発電問題の取材を理由に約1か月の年次有給休暇の申請を行いました。これに対して会社は2週間ずつ2回に分けて取得して欲しい旨を伝え、後半の2週間については時季変更権を行使しました。しかし、社員は当初の予定通り1か月旅行に行き、時季変更権を行使した2週間について出勤しなかったので会社はけん責処分を行い、賞与の減額を行ったところ、これを不服として社員は訴えを起こしました。
◆事件の争点
①時季変更権の考え方
②長期休暇時の考え方
◆判決の判断
①年次有給休暇の権利は、労働基準法39条1、2項の要件の充足により法律上当然に生じ、社員がその有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して休暇の時季指定をしたときは、会社が適法な時季変更権を行使しない限り、右の指定によって、年次有給休暇が盛立して当該労働日における就労義務が消滅するものである。そして、同条の趣旨は、会社に対し、できる限り労働者が指定した時季に休暇を取得することができるように、状況に応じた配慮をすることを要請しているものと解すべきであって、そのような配慮をせずに時季変更権を行使することは、右の趣旨に反するものといわなければならない。しかしながら、会社が右のような配慮をしたとしても、代替勤務者を確保することが困難であるなどの客観的な事情があり、指定された時季に休暇を与えることが事業の正常な運営を妨げると認められる場合には、会社の時季変更権の行使が適法なものとして許容されるべきことは、同条3項ただし書の規定により明らかである。
②社員が長期かつ連続の年次有給休暇を取得しようとする場合においては、それが長期のものであればあるほど、事業の正常な運営に支障を来す蓋然性が高くなり、会社の業務計画、他の社員の休暇予定等との事前の調整を図る必要が生ずるのが通常である。しかも会社にとっては、労働者が時季指定をした時点において、事業活動の正常な運営の確保にかかわる諸般の事情について、これを正確に予測することは困難であり、当該労働者の休暇の取得がもたらす事業運営への支障の有無、程度につき、蓋然性に基づく判断をせざるを得ないことを考えると、労働者が、右の調整を経ることなく、その有する年次有給休暇の日数の範囲内で始期と終期を特定して長期かつ連続の年次有給休暇の時季指定をした場合には、これに対する使用者の時季変更権の行使については、会社にある程度の裁量的判断の余地を認めざるを得ない。もとより、会社の時季変更権の行使に関する右裁量的判断は、労働者の年次有給休暇の権利を保障している労働基準法39条の趣旨に沿う、合理的なものでなければならないことはいうまでもない。
◆まとめ
本件は時季変更権の行使が合理的なものと判断されました。長期休暇の場合は事業の正常な運営に支障を来す蓋然性が高いと評価されており参考になる事例と言えるでしょう。
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