マタハラで訴える従業員のケース① ~TRUST事件(東京地裁立川支判平29・1・31)~
東京・銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズです!
今回は会社がマタハラで訴えられたケース(TRUST事件)をご紹介いたします。
ハラスメントの詳細は こちら!
【目次】
◆事件の概要
◆判決の争点
◆判決の判断
◆まとめ
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◆事件の概要
女性社員は平成26年10月に正社員として採用され、建築測量、墨出し等の業務を行っていたところ、平成27年1月下旬に妊娠していることが判明しました。女性社員が今後の仕事について社長及び直属の上司に相談をしたところ現場の業務継続は難しいということになり、社長が関連会社への派遣登録を提案しました。その後1日だけ派遣紹介を受けて就労しましたが、その後は派遣就労することなく平成27年9月上旬に出産をしました。女性社員は退職届を提出しておらず平成27年6月10日付で退職扱いとなっていることを知らされ翌月に自主退職していない旨の見解を会社に伝えました。女性社員は労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、民法536条2項に基づく賃金の支払いを求め、また本件は実質的に見て妊娠を理由とした解雇であり、均等法9条3項、4項(マタハラ)に違反する不法行為であるとして、慰謝料並びにこれらに対する遅延損害金の各支払いを求めて提訴しました。
◆判決の争点
①退職の合意は有無について
②賃金請請求権について
③慰謝料
◆判決の判断
①均等法1条、2条、9条3項の趣旨に照らすと、妊娠中の退職の合意があったか否かについては、女性社員が自由な意思に基づいてこれを合意したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在するか慎重に判断する必要がある。会社が退職の合意があったと主張する平成27年1月下旬以降、6月10日時点まで、女性社員から連絡のあった社会保険について、女性社員の退職を前提に、会社では既に加入できなくなっている旨の明確な説明や、退職届の受理、退職証明書の発行、離職票の提供等の、客観的、具体的な退職手続がなされていない。一方で女性社員は会社に対し、継続して社会保険加入希望を伝えており、退職扱いとなっている旨の説明を6月10日に受けて初めて、離職票の提供を請求した上で、自主退職ではないとの認識を示している。さらに、退職合意があったとされる時に会社が女性社員の産後についてなんら言及をしていないことも併せ考慮すると、女性社員は産後の復帰可能性のない退職であると実質的に理解する契機がなかったと考えられ、また、会社に残るか退職の上、派遣登録するかを検討するための情報がなかったという点においても、自由な意思に基づく選択があったとは言い難い。女性社員が自由な意思に基づいて退職を合意したものと認めるに足りる合理的な理由が客観的に存在することを認めることはできない。
②妊娠中の女性社員に墨出し等の現場業務をさせないことに客観的、合理的理由はあったと考えられる。そこで生活保障的な代替手段として、派遣登録を提案している。女性社員も、当分の間、派遣先で働き、出産後に復帰する意図を有していたことが認められるから、労使間に平成27年1月15日以降、休職とする合意があったと認められる。6月10日に、退職扱いになっていることを伝えられた時点で、会社の責任により労務の提供ができない状態になったと認められるから、同日から民法536条2項に基づき、賃金債権が発生する。もっとも女性社員は9月6日に出産しているところ、同月中副業の勤務実績がないこと、産後は労基法上、強制休業であることから、産前は9月6日までの6日間、産後は8週間の間は賃金債権が発生しない。
※6月10日後、9月の6日間と産後休業以外は賃金債権が発生
③会社が女性社員を退職扱いとしたことには、少なくとも過失があり、不法行為が成立する。ただし、会社が現場業務ができないと考えたことは不合理ではなく、女性社員も了承していたこと等を総合考慮して、慰謝料額は20万円とする。
◆まとめ
女性社員の主張がおおよそ認められた結果となりました。退職の合意に関しては会社として落ち度があったと言わざる得ないでしょう。昨今では特に産前産後休業の社会保険料免除や育児休業給付金等について十分な説明を行うことが会社に要求されています。
いかがでしたでしょうか?育児休業等に伴う労働条件の変更について適正に手続きを行いたい等マタハラ関係でお悩みの方は東京銀座の社会保険労務士法人Aimパートナーズまでお気軽にご連絡ください!
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